地面師①

積水ハウスが品川区西五反田2丁目の2009.76㎡の土地を売主になりすました地面師に55.5億円をだまし取られた事件がありました。

不動産の所有権移転登記をするには、権利書(登記識別情報通知)、実印、印鑑証明書、評価証明書、所有者の身分証明書(運転免許証等)等を用意し、実際に代金の授受が行われれば、依頼した司法書士の先生が法務局に申請をしてくれます。

地面師(グループ)が売主個人のパスポートや印鑑登録証明書等を偽造したようです。おそらく権利書(登記識別情報通知)と評価証明書は偽造していないと思います。権利書がなくても司法書士が本人確認情報という書類を法務局に提出することで権利書に代えられます。評価証明書も司法書士が職権で役所から取得することができますし、あるいは委任状を偽造すれば誰でも取得することができてしまいます。

この事件では土地の売買契約が第三者のためにする契約(新中間省略登記)によって行われたようです。まず平成29年4月24日に売主になりすました地面師とIKUTA HOLDINGS㈱が売買予約契約を結び、さらに同日にIKUTA HOLDINGS㈱と積水ハウスが他人物売買予約契約を結び手付金として15億円を支払ったようです。

対象の土地の登記を確認すると、4月24日にIKUTA HOLDINGS㈱が所有権移転請求権仮登記をしており、同日に積水ハウスがその所有権移転請求権の移転請求権仮登記をしています。

所有権移転請求権仮登記をする際に法務局に売主の印鑑証明書と評価証明書を提出する必要があります。この際に偽造した売主の印鑑証明書が使われ、法務局は偽造されたものとは見破れなかったのか仮登記がされてしまいました。

その後、6月1日に残代金の決済が行われ、積水ハウスは40.5億円をIKUTA HOLDINGS㈱に支払い、所有権移転登記を同日申請しました。しかし、6月9日に法務局が不真正な書類ありということで登記申請が却下されています。ここで初めて積水ハウスは詐欺の被害にあったことが分かったのでしょう。その後、地面師とは一切連絡は取れないそうです。

不思議なことに、4月24日の売買予約契約をした際は、法務局は偽造された印鑑証明書を見破れず仮登記をしてしまっているのに、決済時の所有権移転登記申請を受けた際は偽造された印鑑証明書を見破れたことです。

一度法務局も騙されていることから、この偽造された印鑑証明書はものすごく精巧にできていたはずです。ただ仮登記の申請があった際に法務局が偽造に気づければ積水ハウスの被害は15億円で済んだはずです。さらに積水ハウスも売買予約契約をする前に売主の確認をしっかりやっていれば地面師に事前に気づけたかもしれません。

もしかしたらですが、積水ハウスは薄々地面師に気づいていながら強引に取引を進めてしまった可能性も否定できないような気がします。

長くなりましたので続きは次回に回します。

 

 

ブログランキング・にほんブログ村へ
にほんブログ村

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください